「エクリチュールの声」という過去にp5.jsで作った作品を、誰でも体験可能なWebアプリにしました。
また、LLM(大規模言語モデル)のアンチテーゼというメッセージを、本アプリには込めています(後述)。
- 任意のメモアプリや読書管理アプリに読書メモを残す
- 期間は1年以上を推奨
- 使用するアプリは読書管理ビブリアを推奨
- 書き溜めた読書メモをテキストファイルとして保存する
- ビブリアを使った場合はDropboxにバックアップを作成できるので、バックアップ作成後(CSVとして保存される)、メモの箇所(H列がメモ)を抜き出し(コピー&ペーストし)てテキストファイルとして保存
- 当アプリにテキストファイルをアップロードする
- アップロード後、すぐにあなたの読書メモを素材とした「エクリチュールの声」を鑑賞できます
- 「ファイルを変更する」ボタンを押すと、最初の画面に戻ってファイルをアップロードし直せます
2024年は、まさに「生成AI時代」と呼ぶに相応しい年だったように思う。アーリーアダプターたちがこぞって生成AIの有効活用法を模索し、プロンプトエンジニアリングはその名を冠した求人募集が出るまでに至った。
このような生成AIの発展の基盤となっているのが、LLM(大規模言語モデル)だ。LLMについての詳しい説明はChatGPTに譲るとして、独自のLLMの研究開発競争も激化しており、2025年にはますます多くの様々なアクターたちがこの競争に加わることが予想されるだろう。
だが生成AIには、法的・倫理的問題が多く残されており、それらの解決策を模索する活動が、すでに多くの研究者や政府、企業によって進められている。 このような超生成AI時代において健全に人類社会が発展するためには、LLMや生成AIの有効な活用方法の議論や研究開発を行うに留まらず、そのアンチテーゼの提示が必要なのではないか。それは、「デジタル機器を手放して自然に帰ろう」や「AIは人間の敵だ」などと主張してラッダイトを企てようということではない。
第26回手塚治虫文化賞を受賞後、NHKでアニメ化され注目を集める漫画『チ。-地球の運動について-』には、以下のようなセリフが登場する。
「信徒にとって異端者が。天動説にとって地動説が。 そういう他者が引き起こす捩れが、現状を前に向かわせる希望なのかもしれない。」オクジー
超生成AI時代の結末を悲観論やニヒリズムで終わらせないために、人類の希望のために、アンチテーゼが求められている。
前提:ChatGPTを、LLMや生成AI技術を用いた代表的なアプリとして比較対象にしました
# | 観点 | ChatGPT | エクリチュールの声 | 補足説明 |
---|---|---|---|---|
1 | 生産力 | あり | なし | ChatGPTは、既に多くのユーザが活用している通り、何かを生み出すための道具として活用可能で生産的である。一方、エクリチュールの声は、ただランダムに過去の読書メモの断片を表示するだけで、何かを直接的に生み出す力は持っていない。 |
2 | 用途 | 明確・多様 | 曖昧・限定的 | ChatGPTは、単語の検索や企画の案出し、プログラミング学習やプロトタイプ開発など、それぞれのユーザによって多様な場面で特定の明確な目的を持って活用されている。一方、エクリチュールの声は、何のために利用されるのかがはっきりしておらず、ただ過去の自分の読書メモを普段とは違う形で眺めることができるという限定的な体験を提供するだけである。 |
3 | 効果 | 即効 | 遅効(or不明) | ChatGPTは、料金体系によるモデルの制限を除けば、基本的にユーザが利用したいときにすぐに活用することができ、即時に返ってくる返答から何かしらの益を得られる即効性のツールである。 一方、エクリチュールの声を利用するためには、1年以上の期間をかけたある程度の量の読書メモが必要である。その後、自分の読書メモを素材とした作品を鑑賞したとして、即座にユーザ自身にもたらされる効用があるのかは全くもって不明である。 |
生産力もなく用途も曖昧で効果も不明なエクリチュールの声は、ユーザに対して一体どのような体験をもたらすのだろうか。
User Experience(UX)という言葉のもと、アプリを利用するユーザに明確でわかりやすく心地よい体験を提供することがエンジニアやデザイナーにとっての重要な使命であることに異論はないが、現状からさらに前に向かうための「他者が引き起こす捩じれ」は、何によって生み出されるのか。
エクリチュールの声が、そのような「他者が引き起こす捩じれ」として、健全な「アンチテーゼ」として、どこかの誰かの何かしらの考えや行動に蝶々が羽ばたく時の風圧ほどの影響を与えることができていれば、望外の喜びだ。
「LLM(大規模言語モデル)のアンチテーゼ」とは、LLMの機能や存在に対する反論や対立する考え方、もしくはLLMが提案する価値観や影響に対する批判や対抗的な概念を指します。そのアンチテーゼは、具体的には以下のような観点で表現されることがあります:
- 技術的アンチテーゼ
-
データの偏りや倫理問題
- LLMが訓練に用いるデータが偏っている場合、その結果として生成される情報も偏る可能性があり、これは公平性や中立性を欠くという批判があります。
-
ブラックボックス性
- モデルの内部プロセスが高度に複雑で解釈が難しいため、「なぜその答えが導かれたのか」を説明することが困難です。透明性が欠如しているという批判があります。
-
エネルギー消費
- LLMの訓練や運用には膨大な計算資源を要し、環境負荷が高いという指摘も技術的な批判の一環です。
- 社会的・文化的アンチテーゼ
- 創造性の劣化
- LLMの生成する情報が大量に出回ることで、人間のオリジナリティや独自のアイデアが埋もれ、創造的な活動が低下する可能性が懸念されています。
- 労働市場への影響
- LLMが人間の仕事を代替することで、特にコンテンツ制作や情報提供の分野で雇用機会が失われるという問題があります。
- 文化の多様性への影響
- モデルの出力が主流の価値観や言語に基づいている場合、少数派の文化や言語がさらに周縁化される可能性があります。
- 哲学的アンチテーゼ
- 「知性とは何か」の問い直し
- LLMは統計的手法を基にした生成モデルであり、人間の知性や意識とは異なるものです。この違いを正確に認識しないまま、「知性」や「思考」をAIに委ねることへの懸念があります。
- 道具としての限界
- AIを過信しすぎることで、重要な意思決定を人間が手放し、人間の主体性や責任感が失われるという危険性があります。
- 対抗的技術や概念
- 小規模モデルの推進
- 「大規模」ではなく、特定の用途に最適化された小規模なモデルを用いることで、エネルギー効率や透明性を向上させるというアプローチがあります。
- データ主権とプライバシー保護
- 個人データの利用やモデル開発の透明性を重視し、ユーザーが自分のデータをコントロールできる仕組みを提案する取り組みが挙げられます。
こうしたアンチテーゼは、LLMを否定するためだけのものではなく、より倫理的で持続可能なAI技術の開発を目指すための指針としても機能しています。